平成11年12月3日

 ぼくはこの日のことを忘れることが出ない。 前夜に長男の大学進学について、某大学の推薦入学の意思を確認し、この日が入学金の振込期限でした。 その日の夜も明けぬ早朝に同僚から電話が入った。それは職場の緊急事態が発生したときのための連絡網です。 いわく、日経新聞に京都みやこ信用金庫の経営破綻懸念の記事が載ったので、至急出社しろとの命令でした。 経営破綻とは即ちぼくの職場がいずれ無くなることを意味する。昨夜長男の大学進学の意思を確認し、入学金を納めると約束した矢先の出来事で目の前が真っ暗になる。 当日の仕事は新聞記事に心配した預金者の預金の大量払い出しを防ぐための顧客対応である。  顧客対応もさることながら、この先自分たちはどうなるのかという不安と、前夜長男と約束した入学金を収めるべきかの瀬戸際で、生きた気もしないままの1日でした。 幸い、お客様の反応も冷静で大きな混乱もなく1日が過ぎた。大きな不安を抱えながら、長男との約束を果たすべく入学金を振り込んだ。 あれから5年、何とか長男も大学を卒業する。 職場に向かう電車の中で、向かいの乗客が広げた新聞の1面には、紛れもなくぼくの職場の経営破綻懸念の記事が踊る。それに目を背けるように、将来への不安におののき、小さくなって電車の座席に座っていたあの日のことを忘れることができない。

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